石橋湛山の「社説」

1921年(大正10年)、石橋湛山は『東洋経済新報』の社説で「一切を棄つるの覚悟」を書いています。
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例えば満州を棄てる、その他支那が我が国から受けつつありと考えうる一切の圧迫を棄てる、その結果はどうなるか、また例えば朝鮮に、台湾に自由を許す、その結果はどうなるか。英国にせよ、米国にせよ、非常の苦境に陥るのだろう。なんとなれば彼らは日本にのみかくのごとき自由主義を採られては、世界におけるその道徳的位地を保つを得ぬに至るからである。その時には、支那を始め、世界の小弱国は一斉に我が国に向かって信頼の頭を下ぐるであろう。インド、エジプト、ペルシャ、ハイチ、その他の列強属領地を、一斉に、日本の台湾・朝鮮に自由を許したごとく、我にもまた自由を許せと騒ぎ立つだろう。これ実に我が国の位地を九地の底より九天の上に昇せ、英米その他をこの反対の位地におくものではないか。我が国にして、ひとたびこの覚悟をもって会議に臨まば、思うに英米は、まあ少し待ってくれと、我が国に懇願するであろう。ここにすなわち「身を棄ててこそ」の面白味がある。遅しといえども、今にしてこの覚悟をすれば、我が国は救わるる。しかも、これこそがその唯一の道である。しかしながらこの唯一の道は、同時に、我が国際的位地をば、従来の守勢から一転して攻勢に出でしむるの道である。
以上の吾輩の説に対して、あるいは空想呼ばわりをする人があるかも知れぬ。小欲に因わるること深き者には、必ずさようの疑念が起こるに相違ない。

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石橋湛山は、「大日本主義の幻想」では《朝鮮・台湾・樺太も棄てる覚悟》を主張しています。そして、平和主義こそが近隣諸国の信頼を得て、経済的に成長するのだと言い切っています。
戦後の世界情勢(植民地の独立)や日本の繁栄は石橋湛山の言う通りになっています。この社説を発表した頃は《ワシントン会議》で軍縮条約が結ばれた年です。軍部を批判する新聞が世論を導いた時期でもあります。それが、10年もしないうちに《満州事変》となり「十五年戦争」が始まります。大正10年からの10年間の推移の中に大きな教訓が含まれています。そして、その10年間と現在がよく似ていることに危険性を感じています。

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