今年の映画&読書
2020年は、コロナ禍の一年でした。1月当初は順調に映画館に行っていたのですが、3月以降はちょっと自重したりしたのでレンタルを含めても21本しか見ることができませんでした。少ない中でのベスト5です。
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①「スパイの妻」
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した映画です。
関東軍の人体実験を告発しようとする優作(高橋一生)と妻の聡子(蒼井優)。優作の配慮で密航が失敗に終わった聡子は、精神病院へ面会に来た親しい医者に対して、「先生だから言いますが本当は、私は正気です。でも、そんなことを言う私がここでは狂っているのです」と言います。時勢に棹さす意味は現在に通じるものがありました。
②「マルモイ~ことば集め」
1942年に起こった「朝鮮語学会事件」を描いた映画です。
ジョンファン(ユン・ゲサン)は親日派の父親を持つ裕福な家庭の息子でしたが、彼は朝鮮語学会の代表として、失われていく朝鮮語(韓国語)を守るために朝鮮語の辞書を作ろうと各地の方言などあらゆることばを集めていました。辞書を作るということに対する弾圧があったことを初めて知りました。朝鮮語を奪うことで民族の誇りや独立の意思をつぶそうとした日本の警察・軍隊の凶暴さに支配者の姿を見ました。
③「はちどり」
1994年、空前の経済成長を迎えていた韓国、ソウル。14歳のウニ(パク・ジフ)は、両親、姉、兄と集合団地に暮らしていた。学校に馴染めず、別の学校に通う親友と遊んだり、男子学生や後輩女子とデートをしたりして過ごす日々。ある日、ウニが通う漢文塾に女性教師のヨンジ(キム・セビョク)がやってくる。大学を休学中のヨンジは、どこか不思議な雰囲気を漂わせていた。自分の話に耳を傾けてくれるヨンジに、ウニは心を開いていく。
④「新聞記者」
東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名 FAX で届いた。アメリカで育ちである強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。「加計学園問題」や「山口強姦事件問題」などを想起させる事件を追及する新聞記者の物語です。内閣情報調査室(内調)の実情が明らかにしています。
⑤「ラストレター」
松たか子と広瀬すずという好きな女優が出ているだけでも私にとっては見る価値のある映画です。物語の舞台は仙台と白石です。亡くなった姉・未咲になりすまして鏡史郎(福山雅弘)と文通する裕里(松たか子)、その鏡史郎の手紙が未咲の娘・鮎美(広瀬すず)に届いて、鮎美も未咲になりすまして文通に加わる。回想の高校時代と現在が行き来して物語が進んでいきます。亡くなった未咲を大切にしたい裕里と鏡史郎、鮎美の思いが美しい白石の景色とともに伝わってきました。
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読書は、134冊読みました。コロナ禍で家に居ることが多かった割に思ったよりも少なかった。2月に野村克也さんが亡くなって、その後、続々と発刊された著書を何冊か読みました。今年の収穫は、『ネガティブ・ケイパビリティ~答えの出ない事態に耐える力』帚木蓬生(朝日選書)でしたが、読書ベスト5は、小説に限定しました。
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①『彼女の知らない空』早瀬耕(ハヤカワ文庫)
憲法九条が改正され、自衛隊に交戦権が与えられた冬。空自佐官のぼくは、妻の智恵子と千歳基地の官舎で暮らしている。しかし、智恵子は知らない。ぼくがQ国の無人軍用機を遠隔操縦し、反政府組織を攻撃する任務に就いていることを。ぼくは彼女の知らない空で戦争をしている。
表題作の他、化粧品会社の新素材の軍事転用をめぐり社員夫婦が抱えた秘密、過重労働で心身を蝕まれる会社員と老人の邂逅など、組織で生きる人々のジレンマを描く七編。
この作品で早瀬耕を知り、遡って『プラネタリウムの外側』、『グリフォンズ・ガーデン』も読みました。
②『風花病棟』帚木蓬生(新潮文庫)
医師を主人公とした物語。診療所を守っていた父が亡くなり、寂れゆく故郷を久々に訪れた勤務医の物語「百日紅」。乳がんと闘いながら、懸命に仕事を続ける泣き虫先生の話「雨に濡れて」。医師は、患者の死から逃れることはできません。そんな《どうにも対処しようのない事態に耐える》物語もありますが、心に沁みる10編の短編集です。『ネガティブ・ケイパビリティ』の具体例としての小説でもあります。
③『八本目の槍』今村翔吾(新潮社)
中山義秀文学賞の候補作だったので読みました。
《八本目の槍》とは石田三成のことです。羽柴秀吉の小姓組だった仲間意識が石田三成と七本槍(加藤清正、福島正成、加藤嘉明など)の間にあったとの設定が史実とは違うのでしょうが石田三成が武士の世の中を否定的に見ていて、民衆の入れ札による政治を目指していたという着想に脱帽しました。
④『夏の坂道』村木 嵐(潮出版社)
日本学術会議問題で任命拒否にあった宇野重規・東京大学教授が「徒労感に陥りつつ、家族の支えで歩み続ける南原繁を描くドラマが感動的である」と帯文を書いています。学問と信仰で戦争に対峙した戦後最初の東大総長南原繁の物語です。読んでいて驚いたのは登場人物です。明治40年に一高(東大)に入学した香川出身の南原繁は、校長の《入学の辞》を聞いている。その校長は、新渡戸稲造です。そして、学友に森戸辰男、田中耕太郎、矢内原忠雄がいて、内村鑑三の読書会に参加し、帝大の同僚として美濃部達吉、平野義太郎、津田左右吉などが出てくるのです。
⑤『天国までの49日間』櫻井千姫(スターツ出版文庫)
中学生の折原安音は、同級生からのいじめを苦に飛び降り自殺する。目覚めると、天使が現れ、天国に行くか地獄に行くか、49日間に自分で決めるように言い渡される。日本ケータイ大賞を得た作品で読みやすい。続編も入れると3作出ています。そして、櫻井千姫の小説は当たり外れがないほど面白い。
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小説以外では、『清冽~詩人茨木のり子の肖像』後藤正治(中公文庫))に触発されて、茨木のり子さんの『詩のこころを読む』や詩集をいくつか読みました。
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①「スパイの妻」
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した映画です。
関東軍の人体実験を告発しようとする優作(高橋一生)と妻の聡子(蒼井優)。優作の配慮で密航が失敗に終わった聡子は、精神病院へ面会に来た親しい医者に対して、「先生だから言いますが本当は、私は正気です。でも、そんなことを言う私がここでは狂っているのです」と言います。時勢に棹さす意味は現在に通じるものがありました。
②「マルモイ~ことば集め」
1942年に起こった「朝鮮語学会事件」を描いた映画です。
ジョンファン(ユン・ゲサン)は親日派の父親を持つ裕福な家庭の息子でしたが、彼は朝鮮語学会の代表として、失われていく朝鮮語(韓国語)を守るために朝鮮語の辞書を作ろうと各地の方言などあらゆることばを集めていました。辞書を作るということに対する弾圧があったことを初めて知りました。朝鮮語を奪うことで民族の誇りや独立の意思をつぶそうとした日本の警察・軍隊の凶暴さに支配者の姿を見ました。
③「はちどり」
1994年、空前の経済成長を迎えていた韓国、ソウル。14歳のウニ(パク・ジフ)は、両親、姉、兄と集合団地に暮らしていた。学校に馴染めず、別の学校に通う親友と遊んだり、男子学生や後輩女子とデートをしたりして過ごす日々。ある日、ウニが通う漢文塾に女性教師のヨンジ(キム・セビョク)がやってくる。大学を休学中のヨンジは、どこか不思議な雰囲気を漂わせていた。自分の話に耳を傾けてくれるヨンジに、ウニは心を開いていく。
④「新聞記者」
東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名 FAX で届いた。アメリカで育ちである強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。「加計学園問題」や「山口強姦事件問題」などを想起させる事件を追及する新聞記者の物語です。内閣情報調査室(内調)の実情が明らかにしています。
⑤「ラストレター」
松たか子と広瀬すずという好きな女優が出ているだけでも私にとっては見る価値のある映画です。物語の舞台は仙台と白石です。亡くなった姉・未咲になりすまして鏡史郎(福山雅弘)と文通する裕里(松たか子)、その鏡史郎の手紙が未咲の娘・鮎美(広瀬すず)に届いて、鮎美も未咲になりすまして文通に加わる。回想の高校時代と現在が行き来して物語が進んでいきます。亡くなった未咲を大切にしたい裕里と鏡史郎、鮎美の思いが美しい白石の景色とともに伝わってきました。
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読書は、134冊読みました。コロナ禍で家に居ることが多かった割に思ったよりも少なかった。2月に野村克也さんが亡くなって、その後、続々と発刊された著書を何冊か読みました。今年の収穫は、『ネガティブ・ケイパビリティ~答えの出ない事態に耐える力』帚木蓬生(朝日選書)でしたが、読書ベスト5は、小説に限定しました。
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①『彼女の知らない空』早瀬耕(ハヤカワ文庫)
憲法九条が改正され、自衛隊に交戦権が与えられた冬。空自佐官のぼくは、妻の智恵子と千歳基地の官舎で暮らしている。しかし、智恵子は知らない。ぼくがQ国の無人軍用機を遠隔操縦し、反政府組織を攻撃する任務に就いていることを。ぼくは彼女の知らない空で戦争をしている。
表題作の他、化粧品会社の新素材の軍事転用をめぐり社員夫婦が抱えた秘密、過重労働で心身を蝕まれる会社員と老人の邂逅など、組織で生きる人々のジレンマを描く七編。
この作品で早瀬耕を知り、遡って『プラネタリウムの外側』、『グリフォンズ・ガーデン』も読みました。
②『風花病棟』帚木蓬生(新潮文庫)
医師を主人公とした物語。診療所を守っていた父が亡くなり、寂れゆく故郷を久々に訪れた勤務医の物語「百日紅」。乳がんと闘いながら、懸命に仕事を続ける泣き虫先生の話「雨に濡れて」。医師は、患者の死から逃れることはできません。そんな《どうにも対処しようのない事態に耐える》物語もありますが、心に沁みる10編の短編集です。『ネガティブ・ケイパビリティ』の具体例としての小説でもあります。
③『八本目の槍』今村翔吾(新潮社)
中山義秀文学賞の候補作だったので読みました。
《八本目の槍》とは石田三成のことです。羽柴秀吉の小姓組だった仲間意識が石田三成と七本槍(加藤清正、福島正成、加藤嘉明など)の間にあったとの設定が史実とは違うのでしょうが石田三成が武士の世の中を否定的に見ていて、民衆の入れ札による政治を目指していたという着想に脱帽しました。
④『夏の坂道』村木 嵐(潮出版社)
日本学術会議問題で任命拒否にあった宇野重規・東京大学教授が「徒労感に陥りつつ、家族の支えで歩み続ける南原繁を描くドラマが感動的である」と帯文を書いています。学問と信仰で戦争に対峙した戦後最初の東大総長南原繁の物語です。読んでいて驚いたのは登場人物です。明治40年に一高(東大)に入学した香川出身の南原繁は、校長の《入学の辞》を聞いている。その校長は、新渡戸稲造です。そして、学友に森戸辰男、田中耕太郎、矢内原忠雄がいて、内村鑑三の読書会に参加し、帝大の同僚として美濃部達吉、平野義太郎、津田左右吉などが出てくるのです。
⑤『天国までの49日間』櫻井千姫(スターツ出版文庫)
中学生の折原安音は、同級生からのいじめを苦に飛び降り自殺する。目覚めると、天使が現れ、天国に行くか地獄に行くか、49日間に自分で決めるように言い渡される。日本ケータイ大賞を得た作品で読みやすい。続編も入れると3作出ています。そして、櫻井千姫の小説は当たり外れがないほど面白い。
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小説以外では、『清冽~詩人茨木のり子の肖像』後藤正治(中公文庫))に触発されて、茨木のり子さんの『詩のこころを読む』や詩集をいくつか読みました。
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