『彼女の知らない空』早瀬 耕(小学館文庫)

書店で見かけた文庫本の帯が気になって読みました。
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憲法九条が改正され、自衛隊に交戦権が与えられた冬。空自佐官のぼくは、妻の智恵子と千歳基地の官舎で暮らしている。しかし、智恵子は知らない。ぼくがQ国の無人軍用機を遠隔操縦し、反政府組織を攻撃する任務に就いていることを。ぼくは彼女の知らない空で戦争をしている。
表題作の他、化粧品会社の新素材の軍事転用をめぐり社員夫婦が抱えた秘密、過重労働で心身を蝕まれる会社員と老人の邂逅など、組織で生きる人々のジレンマを描く七編。

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「彼女の知らない空」の中には次のような箇所があります。
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人前では口にできないが、憲法改正に一番反対したのは、防大卒の中堅幹部だったと言っても間違いない。「シビリアンコントロール」とは裏腹に、戦争をしたいのは政治家で、多くの自衛官は、武力行使を望んでいないし、自分の部下を紛争地域に派遣したいとも考えていない(付け加えるなら、ぼくは、自分の勤める組織を違憲状態だと言われても不満を感じなかった)。
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安倍首相の主張していることにやんわりと反論しているところがあります。私の教え子の中にも自衛官になっている人がいます。最前線ともいうべき基地に勤務している人から「九条の会にがんばってもらいたい」と言われたことがあります。
遠隔操縦で千歳基地に居ながら空爆した後に次のような独白が述べられています。
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(本当に、ぼくがトリガーを引いたのか)
ぼくは、瓦礫の中に傷ついたしたいが映し出されるモニタを見ながら、トリガーを引いたはずの人差し指の感触を確かめる。MQ-9リーパーは、静止衛星を経由して操縦を行うシステムも含めて、すべて米国製だ。無人機の攻撃に際しては、多国籍軍の現地司令部の他に、米国のペンタゴン(国防総省)と市ヶ谷の統合幕僚監部でも同じ画像を確認しているはずだ。自衛官がトリガーを引けないと見限ったときに、別の遠隔操縦室でトリガーを引く仕組みがあったのではないか。あるいは、ボクがトリガーを引いていたのだとすれば、それは、日本の民意なのかもしれない。憲法改正の国民投票は、投票率65%、改正の賛成票55%だ。自衛隊に交戦権を与えることに明確に反対した有権者は約3000万人しかいなかった。有権者の約7割が、あのとき、トリガーを引いたのだ。  (中略)
有権者の約7割の人たちは、緊急事態条項が発令されて民間人にも兵役が課せられたとき、自分や自分たちの子どもがその精神的負担を負ってもいいと、本当に考えたのだろうか。有権者は「徴兵」を過去の遺物だと思っているかもしれないし、有権者の半数を占める女性は「徴兵」を男性の仕事だと考えているのかもしれない。実際、「徴兵」という言葉から連想しやすい陸軍の兵士は、兵器の高度化によって短期間の訓練では務まらない。けれども、この無人機は誰でも操縦できるし、誰でもトリガーを引ける。約7割の有権者は、集団自衛権という名の下に、自分や自分たちの子どもが、行ったこともない土地でいとも簡単に殺人者になることを想像してみただろうか。

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千歳から12000kmも離れた戦闘地域の空爆機を遠隔操縦できるということを初めて知りました。正しくゲーム感覚で空爆機を操縦しているということです。現地で悲惨な状態を見るのではなく、良心の呵責なく人を殺せる時代になっているようです。こんなことが小説ではなく現実に起こらないようにと思うばかりです。

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